初めてお目にかかります。
ラーメン偏愛家の南野マキと申します。

この度は、南野商店にお立ち寄りいただきありがとうございます。当商店は、私が愛してやまないラーメンや日本の乾麺を国境・言語・嗜好・食条件など、あらゆる垣根を越えたカタチでお届けできたらという想いとともに立ち上げました。

人生において優先するものは何かと問われた時、「食事」と即答するほど、私は食に重きを置いています。腎臓を悪くし、生きながらえるため塩分摂取を減らすよう医師から忠告を受けたにもかかわらず、「美味いものが食べられない人生に価値はない」と、亡くなるその日まで好きなものを食し続けた祖父。そんな彼の遺伝子を引き継いだ私もいつしか食にこだわりを持ち始め、その道半ばでラーメンそして “乾麺” と運命的に出逢います。

 

 

はじめての麺の記憶は親戚の家で⾷べた素麺でした。上品さを纏いつつもコシのある食感、ほのかに香る小麦粉の風味。それらから受けた衝撃と感動は瞬く間に私を “麺の虜にしました。以来、ラーメン好きの父に連れられて店巡りをした地元三重県での高校生活、名古屋で評判の中華料理店でアルバイトをした大学時代と、思えばいつでも美味しい麺料理に囲まれている環境に身をおいたように感じます。

就職活動を始めるにあたり、真っ先に浮かんだ言葉はもちろん「食」と「麺」。手始めに朝昼晩3食、カップラーメンを食し、自分なりの見解の記録を開始しました。その中で特に麺が素晴らしい即席麺メーカーと出会い、就職。3ヶ月間の工場研修で即席麺製造をひと通り学んだ後、営業部門へ。営業と称しながら食べ歩きを行い、プライベートでも日本各地のラーメン店を巡りました。

 

 

退職後、即席麺業界にいた経験から「袋麺」についてメディアでお話ししてほしいというオファーをいただき、改めて使用されている麺を調べていたところ、即席麺ではない“ 乾麺 ”という存在と出会います。特徴は、百年以上ものあいだ磨かれてきた職人の技によって生まれる生麺とも異なる麗しい口触り。乾麺には私が求めていた最高の食感と、常温での長期保存が可能という底知れぬポテンシャルが秘められているのを発見しました。

一方で、乾麺業界が直面する危機も知ることになります。それは後継者の不在と運転資金の不足。乾麺には生麺製造の後に「干し」の工程があり、温度と湿度を徹底的に管理された環境を用意する必要があります。そして、そのための広大な土地と設備の維持費。しかし、日本では乾麺が身近すぎるということもあり、販売価格はそれらの経費を十分にカバーされるほどの値段になってはいません。「食は安価で美味しいものが最上」という不文律を遵守しようとするがゆえに伝統技法が衰退していく。そんな構図ができ上がってしまっているのではないかと感じました。

技術に驕らず謙遜し、ひたむきに鍛錬し続ける職人の姿勢、そしてその技術の価値を市場や価格にもっと反映させられないか。そんなことを考えていた矢先、海外で現地の方が経営されている人気の日本式ラーメンをいただく機会にめぐまれました。それらのスープの質は一様に目を見張るものがあるにもかかわらず、麺(生麺)には何故かしっくりこない。その理由は現地に製麺所がまだ少ないこと、重用される生麺は賞味期限の問題で日本からの輸出が困難であること、自家製でつくろうにも水の違いや技術不足で製作が難しいなどであることは想像に難くありませんでした。

 

 

そこで思い浮かんだのが、日本の“乾麺” の輸出。生麺と比べても遜色ない食感を有し、常温かつ長期保存が可能な乾麺が海外のラーメン事業における麺の質の向上に貢献ができるのではないか。同時に海外においては1杯の平均価格が日本より数倍の高単価、くわえて乾麺の存在自体がまだ知られていないことから、日本の製麺所が抱える薄利多売という状況を打破できる可能性があるのではないかという考えに至りました。しかし、調査を重ねるにつれ、食品の越境問題が大きな障壁となっていることを見つけます。気が遠くなるほど煩雑な申請作業、国ごとに異なる輸出禁止の原材料や添加物などの複雑な基準への対応。そして獲得した認証を維持するための人材と経費の継続的な捻出。これらにより、海外輸出を諦めた中小の製麺所が多く存在していました。

 

 

ここで私ができることは何か。製麺の職人でもなく、ラーメン店主でもない、ただただラーメンを偏愛する人間である私にできることは。それは乾麺の輸出や紹介に特化したお店を作ることでした。価値のあるものは、価値を認めてくれる場所でこそ、その花を咲かせてほしい。願わくば、そんな場所への⼊⼝になるお店をと作ったのがこの南野商店です。

今はまだ取り扱う商品が決して多くはありませんが、素晴らしい乾麺とそれを世界中の方に味わっていただけるようなラーメンを、日本が誇る製麺所や職人の皆さまと協業してご用意していく予定です。一歩一歩、着実に歩みを進めて参りますので、ぜひ時折お立ち寄りいただけますと幸いです。


2024723日
「南野商店」店主 南野マキ

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